「わかー!!」

「先輩、俺は「わかし」です。何回も言わせないで下さい。」

「わかのが良いよ!わかがダメでも私はそう呼びたいの!」

「・・・・・・。勝手にして下さい。」

「うん。勝手にするー。」


嬉しそうに笑う先輩を見て、カワイイと思ってしまう。
こんな感情、今までになかった。
跡部さんとかにすぐ気づかれて、やっと自覚した。
あぁ、俺・・・先輩のこと好きなんだ、って。
先輩は鈍いから全く気づいてないけど。でも、先輩は本当にカワイイと思う。
・・・だからと言ってどこかの伊達眼鏡のようにカワイイとか言えない。
先輩が言われているところを見ると、本当に腹がたってくる。


ちゃん、今日もカワエエよー!!」

「ゆーし、今日も変態だよー!!」






「ちっ・・・・・・下克上だ・・・!!」

「ゆーしに?それなら私、わかを応援するよ!!」

「先輩・・・!?いつのまにいたんですか・・・。」

「わかが下克上だ、とか言ってたからどうしたのかなーって。」

「・・・特に何でもないです。」

「そう?何かあったら言って!私が聞いてあげる!!」

「ありがとうございます。」


言えるもんなら言いたい。
でも、それで今の関係が崩れるのも嫌だ。
結局俺はどうしたいんだ・・・。畜生。


「でもよー。日吉って鈍いよな。」

「・・・喧嘩売ってんですか?買いますよ?」

「くそくそ、日吉め!せっかく良いこと教えてやろうと思ったのによ!!」

「・・・?何なんですか?」

「しょーがねーなー。教えてやるよ。あのな、って好きな奴いるらしいぜ?」

「・・・・・・・・・・・・・・・な、何でそれを俺に、言う、んです?」


・・・ヤバイ。噛みまくった。
向日さんにバレてるとは思ってなかったから。
跡部さんがチクッた・・・!?いや、さすがにそれは・・・。
・・・。向こうで伊達眼鏡がニヤついてる。アイツだ。
・・・・・・・・・・下克上だ!!!!


「アハハー。ひよC噛みすぎだC−。」

「ちょっとむせただけです。俺は先に練習しに行ってきます。」


知らなかった。先輩に好きな人がいるなんて。
跡部さんか・・・?その可能性が一番高い。
ああ・・・ムカムカする。


「あ、わか。もう練習するの?えらいね!」

「どうも・・・。」

「あれ?わか、どうかしたの?元気ないよ?」

「何でもないです。」

「嘘。ねぇ、何があったの?」

「・・・先輩には関係ないです。ほっといて下さい・・・!!」


何てことを言ったんだ?俺は。
最低だ。俺の自分勝手で先輩を傷つけた。
そう思い、先輩に背を向け、コートに向かおうとする。


「そうだとしても・・・!!」

「せ、んぱ・・い・・・!?」


え、これはどうなってるんだ?
後ろを向いたと思ったら後ろから体重が掛かってきた。
え??え・・・??


「私に関係なくたって、相談してよ・・・。心配じゃん・・・。わかのこと。」

「すいません・・・。」

「それに・・・好きな人のことが心配になるのは当たり前でしょう・・・??」

「は・・・!?」

「好きなんだよ、わかのことが・・・!!」


そして、背中にかかる重さが少しだけ増す。
それでも先輩は軽いな。とか思ってる自分は相当バカだと思う。


「先輩・・・一回しか言いません。」


本当は俺から言った方が良かったに決まってる。


「俺は・・・・・・・・・」


でも、それでも言いたい。今なら言える。


先輩が、好き、です。」


「本当に・・・?」

「一回しか、言えません・・・。」

「えへへー。わか、カワイイ。」

「嬉しくないですよ・・・。」

「ねぇ、何があったの・・・?」

「・・・向日さんから先輩に好きな人がいるって聞かされて、それが、跡部さんじゃないかって思っただけ、です。」

「どーしよ、わか。」

「何がです・・・?」

「私、今世界一幸せだわ。」

「俺は今、世界一恥ずかしいです。」


何せまだ、先輩は俺に後ろから抱き着いている。
内心嬉しいが、やっぱり恥ずかしい。
どうやら先輩は俺を困らせるのが得意らしい。


「ねぇ、わかー・・・あと一回だけ、好きって言って?」

「無理です。」

「お願ーい・・・!!」

先輩、好きです。」












(わか、大好き!!)
(先輩・・・恥ずかしいです。)
(カ、カワイイ・・・)