、置いてくで!?」

「兄ちゃん待ってよ!!」

がついてきたい言うたんやろ!!」

「せやけど・・・!!」

「あぁ、そうや。テニス部になぁ、めっちゃ強い一年入ってん。にも紹介したるわ。」

「そんな強いん?すごいなぁ。あたしの学校にはそういう子おらんみたいやわ。並やな、並。」

「つまらんなぁ。まぁ、うちの学校は頭より運動やでな。ほら、電車来んで。」


あたしは兄に連れられて、兄の通う四天宝寺中に見学に行くことになった。(あたしは別の私立に通っとるから四天宝寺のことはわからん)
兄ちゃんがそこのテニス部長やから見せてっもらうっていう、ちょっとした職権乱用やけどな!!まぁ、その辺の細かいことは気にしたらあかんで。
しばらく電車に揺られて学校の最寄り駅に到着。その駅からはあんまり遠くなかった。


「おーい、白石。」

「何スか、部長。」

「こいつ、俺の妹やねん。お前と同い年。仲良ぉしたってや。」

「俺、白石蔵ノ介や。ええ名前やろ?」


初めての会話がええ名前やろ?とかめっちゃウケてん。あたしのツボやわ。しかも良く見たらめっちゃカッコエエし・・・。いや、カッコエエて思ただけで、惚れたりとか一目惚れとかじゃないで?そこ、勘違いしたらあかんで。


「うん、ええ名前やと思うよ。あたしは。よろしゅうな。」

「へぇ、部長と似とるんやなぁ。もテニスやっとるん?」

「しとるよー。あんま強いとこじゃないねんけどな。」

「私立通っとるん?」

「そうそう。あたし、運動よか勉強のがマシやったでさ。」

「うわー。スゴイなぁ。俺、勉強アカンねん。あそこでイチャついとる眼鏡おるやろ?アイツはメッチャ頭良いで。」

「・・・ぶっちゃけ見えん。」

「・・・やろ。」


その後は兄ちゃんが練習メニューを言って、みんなでそれをこなして・・・ってしとるところをあたしは見学しとった。やっぱ兄ちゃんのお気に入りらしい、蔵ノ介はレギュラーに劣らんくらい良い動きしとった。やっぱ自主トレとかもすごい頑張ってんねやろなぁ。


ー。」

「あ、兄ちゃん。どないしたん?」

「ちょい白石がケガしてもうてん。手当てしたってくれん?」

「え、蔵ノ介は大丈夫なん!?」

「大したケガちゃうで大丈夫やで。部室に救急箱あんで。無かったら保険室行きや。場所は白石に聞けばわかんで。」

「わかった。白石ー!!部室に来てやー。」

「おぉ。今、行くわ。」


部室で救急箱を探すために先に部室へ入ってく。救急箱のありそうな雰囲気の棚を漁っとると、蔵ノ介が来た。


「堪忍なぁ。。んで、救急箱あった?」

「この辺にありそうなんやけど・・・。あ、あった。」


棚の上に救急箱を発見。ちょい高いとこにあるけど、背伸びしたら届きそうな感じ。
・・・届きそうな感じはするんやで?いや、届くはず。あたし、中1の女子にしては身長少し高いもん。


「はは、届きそうやのになぁ。残念。」


あたしが必死こいて頑張ったのに、蔵ノ介はひょいって救急箱取った。近くで見ると、さらにカッコよく見えるなぁ。って思ったわけで・・・。あたしのこれはもう、恋やね。認めるわ。あたし、蔵ノ介に一目惚れした。
やから、今、少し汗の臭いにまじって良い匂いがホワッてしたとか、そんな細かいことにまでドキドキすんねやなぁ。


?どないしたん?」

「あー・・・何でもないよ。」

「ならええけど・・・。あ、救急箱ん中、ガーゼしかあらへんやん。」

「ガーゼでもええと思うで?」

「せやけど、たいしたケガやあらへんし・・・。」

「まぁ、念には念を、やで。」

「せやな。じゃあ頼むわ。」


そこ、座ってって蔵ノ介を促して、あたしはガーゼを取り出しす。「ちょいしみるで。」と言って、擦りむいている膝に消毒液をかける。蔵ノ介は一瞬、眉間に皺を寄せたけど、すぐに元の表情に戻った。 チラ、と蔵ノ介の顔を盗み見たら、目があった。やけど、恥ずかしなって、あたしが目を逸らした。


。」


ガーゼを適当なサイズに切って、あとは貼るだけってときに、蔵ノ介に呼ばれた。


「何?どうかしたん?」

「や・・・、睫毛長いな思て。」

「は・・・?」

は、さ。俺のこと嫌い?」

「嫌いやないけど・・・何で?」

「んじゃ、先に謝っとくわ。ゴメン。」


何のことか、あたしの頭が理解できてへんうちの、蔵ノ介はちょっとあたしに顔を近づけて、もう一回ゴメン、て言うた。それが、何への謝罪なんかがわかるのは、そっからすぐ・・・数秒後やった。


「俺、のこと部長から聞いて、めっちゃ興味もってん。」


蔵ノ介にキスされた。その後、あたしの頭が事態を理解できずに、何もできんとただ蔵ノ介の言葉の続きを待った。


「最初は、部長ってめっちゃカッコエエやん?やから妹はカワエエんやろなぁ、ってくらいやった。せやけど・・・」

「部長からの話聞く度にどんどん惹かれてった。あぁ、この子は優しい性格してんねやなぁ。って。」


そん時の蔵ノ介の顔が、あまりにもキレイで・・・。あぁ、蔵ノ介はホンマにあたしのこと好きなんや・・・本気なんや、って思た。やから、今やったらあたしも言える気ぃするわ。蔵ノ介に。


「蔵ノ介・・・好き。初めて会うたけど・・・あたし、蔵ノ介に一目惚れした。」

「・・・ホンマに?」

「う、嘘やったらこんなこと言われへん・・・!!」

、耳まで真っ赤やで。」


ちょっと自分でも自覚しとる。めっちゃ顔熱いもん。耳まで真っ赤でもおかしないわ・・・。蔵ノ介はあたしを見て少し笑って、もう一回、「めっちゃ好き。」って言った。
あたしはガーゼを貼るんも忘れて、蔵ノ介の言葉に頷いた。





キスをもう一度。