ある日突然現れた君は、私に魔法をかけてくれたね。私より若干小さかった君は、それでも大きく見えたし、誰よりも輝いて見えた。それから私は別の魔法にもかかってしまったんだ。だって、もう君しか見えない。
あのね、岳人は忘れてるかもしれないけど、私はしっかり覚えてるんだ。だって、嬉しかったもん。岳人、ありがとう。
「ー!帰ろうぜ!」
「うん。岳人を待ってる間にね、岳人と出会ったときのこと思い出してたんだよ。」
「と出会ったっていうと・・・4年のとき・・・だったっけ?」
「うん。私はそのときに転校してきてさ。」
「同じクラスになったんだよな。」
岳人、覚えてくれてたんだ。私が氷帝の幼稚舎に入って2ヶ月。友達ができなくて、クラスの子の名前とかも覚えれていなかった頃。そんな時に岳人は突然喋りかけてきたんだ。
「俺、向日岳人!今更だけどよろしくな!」
「向日くん・・・?」
「岳人でいいぜ!向日って言いにくいだろ?」
「うん。よろしく。」
それから、岳人は毎日私に喋りかけてくれた。私から喋りかけることもどんどん増えていった。そんなある日の放課後、岳人は言ったんだ。
「なぁ、。って俺以外と喋ってるとこあんま見ねーけど・・・。」
「私・・・人見知り激しくて・・・自分から話すのって苦手だから・・・。」
「マジ!?、こんなに明るい奴なのにな。」
それから岳人はうーん、と唸っていた。それを私は隣で見ていると、岳人はいきなりバッと顔をあげて、こう言った。
「俺、に魔法かけてやるよ!」
岳人はとびっきりの笑顔で私を見て、それから私の腕を掴んで教室を飛び出した。向かった先は屋上。屋上へと出られるドアを開けたときの爽快感は今でも覚えているし、きっと一生覚えていると思う。そして岳人はそのままフェンスの近くへ行った。屋上から見える運動場には、下校中の生徒や遊具で遊ぶ生徒も見えた。
「4年のはすっげーイイ奴だー!!」
「えっ、岳人!?」
屋上から運動場に向かって大声で叫んだ岳人に私は驚いた。そして、叫ばれた内容に顔が真っ赤になった。そんな私に岳人はも俺のいい所叫べよ!いい所いっぱいあんだろ?って言った。私は、私だけ恥ずかしい思いをするのもあれだと思い、息を吸い込んで叫んだ。
「向日岳人はすっごく優しい人ー!!」
「へへ、いいじゃん!」
下にいる人たちはみんな笑っていたけど、そんなのがどうでも良くなった。私達は交互に叫びあっていたけど、そのうちに先生が来て、2人でお説教をくらった。それでも、私はスッキリとしていて、その日は岳人と一緒に帰った。その帰り道でもたくさん喋った。
そして、その次の日、女の子から男の子までたくさんの子が私に喋りかけてきてくれた。最初はビックリしてあんまり喋れなかったけど、そのうち喋れるようになった。
「な、俺の魔法ってすごいだろ!」
「うん!ありがとう、岳人!」
そうして私の人見知りは直って、今ではたくさん友達もいる。岳人とはそれからの5年間クラスがずっと一緒だった。
「んで、中1の丁度今日、俺からに告ったんだよなー。」
「そうそう。私、すっごいビックリしたんだよね。」
「えー?俺、小4からずっと片思いしてたのによー。」
「私も、小4からずっと岳人の魔法にかかってるんだよー。」
「ってことは、俺等、付き合ってはなくても5年間両思いかよ!すげー!」
「あはは!そうなるよね!」
完全下校のチャイムが鳴って、外は夕日が照っている。電気は付いていなくて教室は夕焼け色に染まっている。
「俺、マジでに会えて良かった。」
「私も岳人に会えて良かった。会えてなかったら人見知りも直ってなかったし。」
「ありがとな、。大好きだぜ。」
「ありがとう、岳人。大好きだよ。」
夕焼け色の教室の中で、私達はキスをした。
夕焼け色のMemorial Day
ほら、影も繋がった。