「俺、さ。本気で君に惚れたんだ・・・。付き合ってほしい。」
「・・・・・・やだ。」
「そっか・・・。」
「だって・・・千石は、千石じゃん。何で無理して女の子のアドレスとか消したりするの?」
「・・・本気だから。のこと。」
「千石は、さ。自分の好きなものを手放して・・・耐えられる?」
「どうだろ・・・。物による、かな。」
「・・・そっか。ごめんね、変なこと聞いて。」
「ねぇ、聞いてくれる、かな。」
「うん・・・。」
「俺は・・・・・・・・・・・・えっと、何だっけ?」
「カーーーーーーーーット!!!!!!」
教室に、南の声が響く。普段目立てないからってかなり張り切ってるみたい。文化祭の出し物のの劇。自分達で台本作りから始めよう!ってことになって、作ったはいいけど、それは恋愛ものだった。更に運悪く、主人公の片思いの相手役・・・つまり、ヒロイン役は私なんだよね。くじ運、昔っから悪いからなぁ〜・・・。あー、アンラッキー。って千石と被ってる・・・。あ、ちなみに主人公役っていうのが千石ね。
「千石、ちゃんとセリフ覚えろよ!!」
「だって、みたいなかわいい子を目の前にしていつも通りに振舞える!?」
「ちょ、千石!!バカなこと言わないでよ!!」
「えー?俺は事実を言っただけだよ?」
あっけらかんとして、千石は言い放った。私みたいな何のとりえも無い子にでも優しくしてくれる千石を、私は密かに好きだったりする。私は比較的男子とも仲良くできる性格らしいんだけど・・・千石とは、ね。千石の性格が性格だから・・・。
「ていうか、南がこの台本書いたんだよね!?」
「そうだけど・・・?」
「何でわざわざラブロマンス風なわけ!?アレですか、氷帝の忍足くんですか!!」
「何で忍足が出てくるんだよ!!じゃなくて、文化祭だったらやっぱ派手にいかないと!!」
「そういうところで見栄をはるから千石に地味’sなんてい言われるんだよ!!」
「えぇ!?そうなのか!?」
・・・ああ、ダメだコイツ。そりあえず、ショックを受けてる南を視界から消した。そして、何となく千石を見た。そしたら、目が合って、ニコッと微笑んでくれた。いつものヘラッとした笑顔じゃなくて・・・何ていうんだろう。とりあえず、私はヤバイと思って咄嗟に目を逸らした。
「。」
「うわっ、ビックリした。何?亜久津。」
「ちょっと付き合え。」
「あー・・・うん。いいよ。」
どうせ、監督の南は今放心状態だし。そして、教室を出るとき、また千石を見てしまった。そしたらまた目が合った。でも、どことなく怒っているような、そんな目だった。
とりあえず、亜久津について来て、到着した場所は屋上。ドアを開けた瞬間にひんやりとした風が入ってきて、その冷たさに秋を感じた。
「で?どうしたの、亜久津。珍しいね?」
「千石の奴をからかいたくなってな。」
「千石を?」
「あぁ、そうだ。」
「そりゃまた、どうして?」
「クク・・・そのうちわかるぜ。」
いや・・・私、バカだから説明してくれなきゃ理解できないよ。亜久津も無駄に頭良いんだからちゃんと説明できるはずでしょ?・・・まぁ、声に出しては言えないんだけどね。私だって自分の命は惜しいですから。
それから、少し経ったあと。
「オイ、。」
「ん?何?」
「やるよ。」
そう言っていつから持ってたのか、缶を取り出して、私に投げる。何かと思って見てみたらココアだった。甘いの好きなんだよね。ナイス、亜久津。しかも、結構温かい・・・。本当にいつから持ってたのか知りたいです。
まあ、それは置いといて私は遠慮なくココアを飲んだ。いい感じに冷めてて飲みやすかった。温かいココアが体内に入ったことで、私の体は少しは温まった模様。もう一回言う。ナイスだ、亜久津。
「でも・・・珍しいね。頭でも打った?」
「あ゛ぁ!?犯すぞ、てめぇ。」
「バッ・・・!!何言ってんの!?絶対嫌!!断固拒否する!!」
「ケッ、力いっぱい拒否りやがって。」
「何で、そのー・・・キスもしてないのに先にヤらなきゃいけないわけ!?」
「・・・問題、そこかよ。」
「いや・・・それだけじゃないけど。でも、別に亜久津とヤりたいわけじゃないもん。」
「ほぅ。」
そういうと、亜久津は吸っていたタバコを踏み潰し、私のもたれ掛かっているフェンスに近づいてきた。怖い!!怖いって亜久津!!
そして、私の正面にくると、顔を近づけてきて、こう言った。「そろそろだぜ。」って。私は全くもって理解できない。何がそろそろなわけ?しかも、顔近いから。いくら私でも緊張するって。バカ、と言おうとしたその時、屋上のドアが開いた。
「あー・・・亜久津。お取り込み中悪いけど、、返してくんないかな。」
「ハッ。いいぜ。じゃあな、。」
「あー、うん。バイバイ。」
・・・結局、亜久津は何がしたかったんだろう?ココアくれただけじゃん。しかも、教室に戻る途中の廊下。やっぱり千石は怒っているっぽかった。早くこの雰囲気から抜け出したいけど、私のクラスと屋上は結構離れている。まだまだ距離はある。先に謝っておこう・・・。
「千石、ゴメン。怒ってるよね・・・。練習、途中で抜け出したりして・・・。」
千石は足を止めた。誰も居ない廊下にキュッと上靴と床の擦れた音が響いた。そして千石はやっとこっちを向いた。その表情はやっぱり怒っている。でも・・・少し悲しそうにも見えた。
「・・・俺が、そんなことで怒ってるように見える?」
そう言って千石はやっと喋った。そう思った。でも、それから一瞬・・・私は何が起こったのかわからなかった。
千石に腕を引っ張られて、いきなりだったから当然私の体はバランスを崩した。そして、千石の方へ倒れこんだと思ったら、唇に柔らかくて、熱い感触を感じた。・・・・・・・キスされた?
「んー・・・!!」
息が続かない。苦しくなって、私は酸素を求めて口を開けた。そうしたら千石の舌が侵入し、口内を犯していく。その感覚に耐えられなくなって、私は必死で千石に名前を呼んだ。
「はっ・・・千・・石・・・!!」
「・・・亜久津ともしてたんでしょ?」
ようやく解放されたとき、千石が言った。
「何・・・を?」
「キス。」
「はぁ!?」
「いいよ、隠さなくても。」
「本当にしてない!!っていうか・・・その、キス・・・したの初めて・・・。」
「え・・・マジ?」
「マジ。」
「じゃ、じゃあ、亜久津とは何してたの・・・?」
「私も良くわかんない・・・。屋上行って、そしたら亜久津が千石をからかいたくなったって言って・・・それから千石が来るときに、そろそろだぜって耳元で言われて・・・。」
「あー・・・。ストップ。わかったよ。」
わかったって・・・何が?やっぱり私には理解できない。そういえば千石も国語は得意だったよなぁ・・・って関係ないか。でも、わかったってことは、亜久津と千石に関係があるってこと・・・?
「千石・・・私には理解できないんだけど・・・。」
「亜久津にバレてたんだよ。俺の・・・その、気持ちっていうか。」
「千石の気持ち・・・?」
「俺、本気でに惚れたんだよ。それで、俺・・・本気の恋愛って初めてで、どうして良いかわかんなくて・・・。」
「え・・・。」
「だから・・・その、亜久津に・・・嫉妬、したんだ。」
こんな千石は初めて見た。いつもヘラヘラしている千石。女の子を見るとニヤニヤして寄っていく千石。テニスのことになると誰よりも真剣な千石。私はいろんな千石を見たけど、こんな千石は初めてだった。
「あー・・・俺、カッコ悪い・・・。」
「そんなことない・・・!!今の千石、世界で一番カッコイイよ。」
私はそんな千石が見れて・・・嬉しくて、千石を抱きしめた。
「っ!?」
「・・・好き。」
「俺も。好きだよ、。・・・本気で。」
「千石・・・んっ・・!!」
「キヨ、って呼ばなきゃキスするよ?」
「・・・キヨ、大好き。」
「よくできました。」
そう言って、またキスをひとつ。結局するんじゃん。ここ、誰もいなくて良かったね。・・・学校の廊下だし・・・。
それと、後でキヨに聞いた話。あの屋上にいるとき、キヨの正面に亜久津と私がいて、キヨから見ると、亜久津が私にキスをしているように見えたらしい・・・。言われてみれば・・・たしかにそう見える気がする・・・。
亜久津のバカ。・・・でも、ありがとう、かな。
「南、お待たせ〜。練習再開しよっか!俺の愛しの彼女も帰ってきたし♪」
「ちょ、千石っ・・・!!」
「キヨ。」
あー・・・信じらんない。ここ教室だよ?みんな見てるよ?しかも、南は目の前ね・・・。それなのにキヨはキスをしてきた。・・・た、確かにキヨって呼ばなきゃキスする、とは言ってたけど、時と場合を考えて欲しい・・・。
南なんて顔、真っ赤じゃん。周りもヒューとか言ってるし、女子は悲鳴あげてるし。(どっちの意味だろう?)
「は俺の初めて惚れた子ね。だから、今俺のメアドとケー番知ってる女の子。全部消しておいて♪」
キヨのバカさに頭痛くなってきた・・・。別にメールとか電話くらいなら気にしないのに・・・。まぁ・・・嬉しいっちゃあ嬉しいんだけど。なんて考えている私もバカかな。ただのバカじゃなくて、キヨバカ。
「それから亜久津。もう質の悪い悪戯で俺をからかわないでよね。嫉妬しちゃうから♪」
「ケッ。語尾に音符付けてんじゃねぇよ。気色悪ぃ。」
「まぁ、そのおかげでと付き合えたのもあるんだけどね。あぁー俺ってラッキー!!」
★悪戯注意報★