HAPPY BIRTHDAYを聞きたくて
11月24日
「ちゃん!デートしない?」
「嫌です。それよりも先輩…勉強しなくて良いんですか?」
「んー…つれないなぁ。」
「先輩、私に構ってないで受験勉強してください。」
「えー。でも俺、このまま山吹の高校行くし!」
「それでも、成績危ないと外部受験せざるを得なくなりますよ?」
「んー…痛いとこつくなぁ…。」
ちゃんは中1の時から…つまり、去年からってことね。室町くんに誘われてテニス部のマネージャーをしてくれてる。自己紹介のときの凛とした態度に俺は恋に落ちちゃったんだよね。それから毎日デートに誘ってるけど、OKしてくれたことがない。
「あ、いた。!ちょっと来て。」
「十次。どうしたの?」
「良いから来いって。」
「うん。あ、先輩、失礼します。」
「んー。じゃあねー。」
室町くんがちゃんを連れてくのを見送りながらちょっと嫉妬した。だってさ?室町くんたらちゃんの手を引っ張って行ったんだもん。幼なじみって良いなあ。とまあ…俺はもう部活を引退して暇だし、することがないから室町くん達の後をこっそり付いていってみた。
「で?どうしたの?」
「あぁー…あのな?明日なんだけど…」
明日?俺の誕生日だよ。室町くん…それなのにちゃんを遊びに誘う気かい?そんなことされたらキヨ死んじゃう!
「ちょ…十次待って!千石先輩!何覗いてるんですか!」
「あははー…バレちゃった?」
「髪の毛…見えてましたよ。」
「あー…なるほどね。」
って感心してる場合じゃないんだけど…。とりあえず俺は室町くんが何をしたかったのかが気になるんだよね。
「。」
「っ…!」
室町くんの呼びかけにちゃんはぶんぶんと首を横に振っている。んー…ますますわかんない…。
「…バカ、行けって!」
「む…無理っ!あ、亜久津先輩!」
「あ、おい!逃げるな!」
ちゃんは亜久津を見つけると亜久津の方に走って行った。ていうか逃げたって…?何から?室町くん?それとも俺?
「室町くーん…話が見えないんだけど…?」
「すいません、俺からは言えないんで…。」
「んー…そっか。」
俺がしばらく無言で悩んでいると亜久津がちゃんを抱えながら(いや、本当に米俵抱えるような感じ…)俺の方に来た。そして、ちゃんを降ろすと、逃げんなよ。とちゃんに言った。室町くんと一緒のこと言ってるなぁ…。
「…ごめんなさい、亜久津先輩。無理です。」
「はぁ?」
「あー…ちゃん?どうしたの?」
「っ…何でもないです!千石先輩、亜久津先輩、さようなら!十次、部活行こう!」
「…?バイバーイ…?」
俺は訳がわからないまま学校を後にした。そして家に帰って制服のままベッドにダイブした。その際に半分投げた感じになったスポーツバッグがドサッという音がして床に落ちる。
「んー…明日どうしよっかな。」
明日は俺の誕生日。そして土曜日。好きな子を誘って2人で遊びたかったなあ…。っていうのが本音。その時、ケータイが俺を呼んだ。知らない番号みたいだけど…誰だろう?
「もしもし、千石ですけど…」
「あ、千石先輩…?です。」
「ちゃん!?」
「あの…十次に番号聞いて…電話したんですけど、今良いですか?」
「うん!ちゃんからならいつでもOKだよ!」
「ふふ…ありがとうございます。えっと…その、私から断っておいてアレなんですが…。」
まさかこの流れって…!?
「明日…まだ予定空いてますか?」
「っ…うん!空いてる!空いてるよ!」
「明日、遊びませんか?」
「うん!もちろん!」
「良かった…!」
「ひょっとしてさ…今日室町くんと喋ってたのって…?」
「…はい。このことで十次に相談してて…。」
ヤ…ヤバイ!かわいすぎる!今のちゃん、絶対顔赤いよなぁ。見たいな…会いたいな…。でもそれは明日のお楽しみだ。
「じゃあ、明日…駅前に10:00で良い?」
「はい、大丈夫です!あと、夜にもう1回電話しても良いですか?」
「うん!楽しみにしてるよ!」
あー…早く00:00にならないかなあ!