「よっ!キヨスミ!元気ぃ?」
「見ての通り普通だよー。」
「そかそか。まあ、私も普通や。」
「すげー元気そうに見えるんだけど・・・?」
「それが私の普通やねん!」
確かに、その通りだね。そう返事をして、俺はまた空を見上げる。むかつくくらいに綺麗な空は、今の俺にすごく不釣合いだ。全国大会・・・俺たちにとっての最後の大会。聖イカロス戦は、今も俺の頭に焼き付いて離れない。
勝ったのは俺だけ。亜久津の抜けた穴は大きかったな、周りは皆そう言う。確かにそうだけどさ?それでも、俺たちは亜久津がいなくても、行けたはずなんだ。もっともっと上に。あの空に手が届くよりも、もっと高く。
「なあ、キヨスミ。今、全国大会のこと考えとるやろ。」
「ん・・・まあね。」
いつの間にかこっちを見ていたに言い当てられた。すこしびっくりしたけど、人のそういうところに鋭いなら、お見通しだろうな。そう思って普通に返事を返す。
は、全国大会が終わったあと、大阪から東京に引っ越してきた。本当なら4月からこっちに来るはずだったらしいんだけど、四天宝寺中のテニス部のマネージャーをしていたは、全国大会が終わるまで待って、と親に頼み込んだらしく、9月から東京に来たんだ。だから、は俺たちのことを知っていた。
の持ち前の明るさと、関西人ならではのノリでは転校初日ですでに周りに溶け込んでいた。もちろん、俺もいつも通りの調子で喋りかけたりしていた。でも、俺がまだ全国大会でのことを引きずっているんだってすぐにバレた。
「ねえ、。俺ってもうテニス部引退したじゃん?」
「うん、せやなぁ。因みに私も引退したで。」
「俺の居場所ってどこだと思う?」
「哲学的なこと聞かんといてーや・・・。」
「俺からテニスをとったら何も残らない気がしてさ。」
「たらしなキヨスミが残ります。」
・・・すかさずツッコミいれてきた。まあ、どんよりとした空気にならないから、その方が嬉しいんだけどね。(でも、俺はボケてないんだけどね・・・。)もう一度、に聞いたらはちょい待って、考えるで。と一言言って、考えるように空を見上げた。
俺もまた空を見上げた。
「私さあ・・・そういう時にエエ言葉掛けてあげられへんけど、テニスがあってもなくても、キヨスミはキヨスミやって思う。」
返ってきた意外な返事にを見ると、は笑っていた。何ていうか・・・その笑顔がすっごく綺麗だと思った。俺の上にある綺麗な空よりも、ずっとずっと。
言葉の意味を考えて、もやもや〜っとしたものが頭に浮かんだ。俺は俺・・・それは当たり前なんだけど、何だか違う。わかるんだけど、わからない。どう説明して良いんだろう・・・?そう、途方に暮れていると、またが喋りだした。
「少なくとも、私はそう思うで?悩んどるキヨスミもたらしなキヨスミも、全部、千石清純や。」
「そっか。何かわかった気がする。」
「良かったやん。」
「今の俺の居場所はの横だね。」
「へっ?え、あぁ・・・うん、せやな。」
「今照れた?カワイー!」
「照れてへんし!」
ノリの良い子だなーとか、テニス詳しいんだなーとか。そんな風にしか思ってなかったけど、今はすっごいのこと信頼してるんだと思った。多分、この信頼感は友情としての信頼から恋愛としての信頼に変わるんじゃないかって、俺は思う。
あの空より綺麗な笑顔と信頼感。これだけの要素があれば、俺が惚れちゃうのもわかるでしょ?
「俺ってラッキー!」
空に向かって、叫んでやった。お前より綺麗な笑顔を持つ子を見つけたんだって。
ブルー・スカイ
(何・・・?いきなり。)
(内緒だよ♪)
(気持ち悪っ!顔、ニヤけてんで・・・。)