「。生徒会のことだけど、今時間良いか?」
「平古場?良いけど・・・どうしたの?」
「会計の奴が今日、休みだろ?この予算の計算するやつ任されてよぉ。だから、手伝って!」
「あぁ、それか。それなら私がやっとこうか?アンタ部活あるでしょ?」
「あー・・・ある、けど、もう木手には遅れるって言ってあるあんに、なんくるないさー。」
木手に遅れるって言っておいたのは本当。会計の奴の仕事任されたのも本当。でも、それはといるための口実に過ぎない。正直、生徒会に入ったのだってがいるから。
初めてした、本気の恋ってやつ。
1年前、東京から転校してきたアイツ。気が強くて、でも責任感も強くて、アイツの周りには絶えず人が集まる。勉強も運動もズバ抜けてできるってんだから尚更。最初は、ただスゲーなって思ってただけだった。でも、ある日の放課後、生活指導の先生に髪の色のことで捕まってるとき、たまたまアイツが通りかかったんだ。
「先生、お話中すいません。生徒会関係のことでテニス部員と話があるので、平古場をお借りしてもよろしいでしょうか?」
学年一の秀才に言われたら先生も頷くしかない。俺は解放してもらった。そしてその後、ほら、早く部活行きなよ!って少し微笑みながら言われた。
その瞬間、俺はに惚れた。裕次郎にはすぐバレた。でも、協力してもらってメアドとケー番はGETした。そしてが生徒会の会長に立候補するって聞いて、俺は書記に立候補し、2人とも当選した。
そこから、生徒会絡みで少しずつ仲良くなっていった。(と思う。)
「・・・場。・・平古場。」
「えっ・・・あ、悪ぃ。ちょっとボーッとしてたさー。」
「ちょっとどころじゃないと思うんだけど・・・。」
「はは・・・。あ、そうだ。ってわんの誕生日知ってるか?」
「今月・・・だっけ。」
「まあ、正解っちゃあ正解。今日さー。」
「へぇ!おめでと。」
キレイな長い髪の毛を、掻き分けて笑う。その1つ1つの仕草表情に俺はどんどんに惚れていった。2人きりの生徒会室。こんな時間がずっと続けばそれ以外何もいらねぇ。本気でそう思った。
「っ・・・ひ、平古場・・・?」
「やー・・・無防備すぎやっしー。」
自分の腕の中にいるに言う。スポーツできるくせに、全然筋肉とかついてなくて、すっげぇ華奢な体してる。ってこんな細っせーんだなぁ・・・。髪の毛すっげぇキレイだし、シャンプーの匂いか?いい匂いする。って・・・何気に俺、余裕・・・?なことはないけど・・・。
も困ってるみてぇだけど、抵抗はしないし・・・。これって、ちょっとは期待しても良いとか?
「平古場・・・人、来る・・・!」
「見せ付ければ良いさー。」
「ちょ・・・っ!」
「本気で嫌なら・・・振りほどいて逃げれば良いやっしー。」
顔真っ赤にして、少しだけ抵抗してるけど、そうされると少しイジメたくなるっていうのが男の性ってわけで。腕に力を込めると、は俯いた。そして、俺に向かって一言だけ、バカっていった。
「オールマイティーの生徒会長さんはどこ行ったんばぁ?」
「平古場がいきなり抱きついてくるからっ・・・!」
の言葉を遮るように、俺はにキスをした。正直なところ、キスすんのって初めてなんだけど・・・なんつーか、そういう衝動に駆られたというか・・・。が俺の胸を押し返すけど、力が入らないみたいだ。10秒にも満たないその時間。たった一瞬だったけど、後から思えばこの時間が俺達の関係をガラッと変える大きな出来事だったんだと思う。
「好き。」
何を言おうか途方に暮れた俺がやっと一言言えたのは“好き”の一言だった。ちゃんと、に伝わるように標準語で。
にもきっと伝わったんだと思う。
「っ・・・あ、ありがとっ!」
は早口でそう言うと、走って生徒会室を出て行った。“ありがとう”の一言を理解するのに俺はだいぶ時間を要した。多分・・・ドアの方を見つめたまま5分くらいつっ立てたと思う。
そして、書類を提出した後の帰り道、校門でを見つけて、ちゃんとした返事をもらったのは、すぐ後の話。
不器用な僕等。
(それでも、俺はが好きなんだ。)
(気にもならない人なんて助けないよ。)