「公積!」


「はいはい、姫。ここですよ。」


「もう、その呼び方はやめてよ。私は姫なんかじゃないわ!」


「んー・・・でもねぇ、俺達にとってはアンタは姫だよ。」


「私は孫堅様と尚香に拾ってもらった身。姫なんて高い身分じゃないわ。」




そう、私は魏が私のいた村に攻めて来たとき、両親も親戚も、近所の人も・・・そこの村人が全員殺された。私は怖くて怖くて、ずっと隠れていた。それでも、私は号泣していたから、嗚咽が漏れて、隠れていた押入れの戸がガラッと勢いよく開けられた。目の前にいたのは思ったとおり、敵兵で・・・。
そんな時、私を助けてくれたのが尚香だった。そして、そのまま私の腕を引いて孫堅様のところへ連れて行ってくれた。そして、その日から私は孫堅様に引き取られて、孫家の養子となった。




「まあ、アンタがそういうんならやめておくよ。」


「ええ、そうして。」


「でも俺にとってはアンタは大事な俺の姫さんなんだけどねぇ・・・。?」


「こ、公積・・・!」




そう、私と公積は恋仲というもの。きっかけは、私が城に来たときに、尚香が私の護衛を公積に任せたから。それからというもの、私と公積は必然的に一緒にいる時間が多くなって、いつしかお互いに惹かれあうようになったのだ。そして、宴の途中で私が外の空気にあたりに廊下へ出たとき、公積も出てきて、そのときに公積から想いを告げられ、私達は恋仲となったのだ。
そして、すぐに尚香にそれを言い当てられたのだった。訳を聞くと、全てはそのために・・・つまり、公積と私を恋仲にするために公積を私の護衛にしたのだという・・・。




「今、いろいろと回想してたっしょ。」


「え?ええ、そうだけど・・・。」


「気づいてる?が昔のこと回想してるとき、いっつも同じ表情してる。」


「でも、公積以外は気づかないわ!」


「俺以外にわかってたまるかっつの!」




そう言って、後ろから抱き着いてくる公積。普段からこういうことは良くあるんだけど、未だに緊張するのはきっと、私が公積を好きだからなんだと思う。まあ、それは人それぞれだからだとして。(多分、公積はこれは日常茶飯事だと思ってる。)
たまーに、お酒がはいったときとか、そういう時は私から抱きつくときもあるけど、そのときは公積もどきどきしている。(らしい・・・。)
以前、尚香に何故護衛を公積にしたのかと聞いたことがある。恋仲にしたいのなら、陸遜でも甘寧でも良さそうだ。すると、尚香はニコッと笑って「女の勘よ。」と答えた。その尚香の勘はアタリだったようで。




「本当に今日なんだよな。」


「何だか信じられないわ。私と公積が夫婦になるなんて。」


「まあな。お、甘寧の奴が呼んでる。さーて、行きますか。」


「あ、待って。公積。」




思いっきり背伸びをして、公積に口付ける。私から口付けるのは本当に初めてだったから、さすがの公積も驚きが表情に出ていた。いつもされている側だったから、何だかしてやったり、っていう感じ。そのまま驚いた表情の公積の腕を引いて、宴の行われる部屋へと向かう。




「ったく、俺の姫さんは行動が読めないっつの。」


「今までもそうだったでしょう?」


「そうだけどねぇ。あ、それと・・・今日の、いつもに増して綺麗だぜ?」


「服とかお化粧がいつもと違うから!」


「似合ってるって。よーし、俺達の晴れ舞台の始まりだ。」


「そうね!」




そうして、お互いに手を取り合って。宴の行われる部屋に着いた瞬間に部屋はわあっと盛り上がり、その日の宴は盛大に行われた。公積も私も普段は多くは飲まないお酒も今日はたくさん飲んでしまって、宴での記憶は途中から曖昧だ。とても楽しかったのだけは鮮明に覚えているけれど。

私が孫堅様の娘となって早5年。私は凌公積と婚約しました。









幸せの二乗









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あとがき

何だかだいぶグダグダですが・・・
とりあえず、凌統と結婚したかったんです!
最初はもう少しシリアスな感じもいれようと思ったんですが、(前半部分)
もう、甘くて良いだろ!って思いなおしてこういう結果に。
初の無双短編ですね!楽しんで頂けたら幸いです。


Ten   2009/05/26