財前って何であんなカッコエエん?ホンマわからんわ。顔ももちろんやけど、あの堂々とした態度、頭の良さ、どこをとってもカッコよすぎやと思うねん。なあ、それセコくない?アタシの兄貴にもその魅力分けたって欲しいくらいやわ。
だって、アタシには財前の欠点なんて挙げられへんもん。
まさに、完璧人間。まあ、ここまで財前のことベタ褒めしとったら、ほとんどの人はアタシが財前にホレとるんやろって思うよなあ?そう思った人、残念でした。アタシは財前が嫌いです。
嫌いっていうか・・・苦手?完璧な人って何か嫌やねん。
ほら、またそうやって人のこと見下す。そういうとこが嫌やねん!人を見下すな、アホ財前!
「おい、。また先生に呼ばれてんで。」
「わざわざ ありがとーございます。」
「何やねん、その返事。めっちゃ腹立つわー。」
いちいち突っかかってくんな!腹立つんはこっちやわ。先生も先生で何でこいつにアタシを呼ぶよう頼むわけ!?マジ意味わからん。あ゛ー!!イライラしてきた。全部 財前光のせいや。うん、そーしとこ。
職員室着いて、先生に何の用か聞いたら教材を運んで欲しいとのこと。
何でそんな重いもんをアタシみたいなか弱い乙女(8割ウソ)に頼むんかと訊ねたら、鉛筆倒しで決めたって。・・・アホか!!!
「先生、どないしてくれるん?アタシの貴重な昼休み潰れたやん。」
「昼休みはの所有物ちゃうでな、大丈夫や!」
「大丈夫って何が!?」
「まあ、そこは大人の事情っちゅーもんや。お、財前!」
ちょ、待てええええええい!!!!!!何で?先生、何で?何故よりによってあの財前光!?まさかこれって、嫌、「まさか」なんてもんやないわ。確実や。か・く・じ・つにお手伝いしたって☆みたいな流れやん!
嫌やで!?アタシは嫌やで!?財前に笑顔で「おおきに」なんて言われへん!(ちょっと、自分落ち着こうか)
「何すか、先生。」
「教材運ぶの手伝ってやってくれんか?」
「別にいいっすけど。」
「や、ええよ!アタシ1人で何とかなる・・・ってか、するし!」
「アホか。こんだけの量お前だけで何とかなるわけないやろ。ほら、行くで。」
「ほんなら、よろしくな。お2人さん。」
ほらな。結局この流れや。そしてアタシはしょーがなく財前と2人で教材を運ぶことになった。しかも、一番離れた校舎まで・・・。あそこって離れとるからあんま人も来やんし、何となくやけど苦手。
苦手な場所に苦手な人間と一緒に教材運びって・・・。今日はツイとらんなあ・・・。
「なあ。」
「・・・何。」
「何でそんなテンション低いの?」
「内心は超ハイテンションやで。イラつきで。」
「何やそれ。」
あ、笑った。ほら、カッコイイ。そういうところがムカつく。女の子にモテまくってんもん。それをさもモテてませんよー。て感じで言ってんのもムカつく。だー!!!!校舎遠いわ!教材重いー・・・。もう、自分のテンションがわからん。
自暴自棄って感じ?うん、そんな感じ。あ、違うかも。
「やっと着いたなー。てか、この教室・・・てか、物置き?狭すぎやろ。」
「せやねー。うん、じゃあお先。」
「ちょ、待て!っ!」
一瞬、何が起こったんかわからんくなった。財前に名前呼ばれた瞬間、目の前が真っ暗んなった。
少しして、目の前が真っ暗なんは、アタシが目を瞑ったからやって気づいた。その目をゆっくりと開けてみると、世界が変わっとった。あ、いや。本当に変わったわけやないけど。
背中に床が当たっとって、埃臭い。そして、目の前に財前。押し倒されてる感じの。・・・え?
「財前っ!?!?」
「アホか!でっかい声出すな!」
「え・・・え・・?何で?」
「が帰ろうとしたとき、本棚に当たって、それが倒れてきたんやわ。」
財前に言われて、やっと状況が理解できた。つまり・・・財前はアタシを助けてくれた、と。庇ってくれた、と。・・・んで、お互い身動きとれへんくなったと・・・。どうしよう。
そのとき、アタシの顔の横の床にポタッって音がして、見てみると、赤い液体。・・・血?
「え・・・ウソ、財前・・!?血、出とる・・・!」
「大したことないわ。それより、こっからどうするか、考えろ。」
「む、無理っ・・・!だって、頭から血出とるし・・・!!」
嘘や・・・どうしよう、アタシのせいや・・・!アタシのせいで財前が怪我した。大したことないとか言うとるけど、頭やもん。大したことないわけがない。いくら財前が苦手やって言っても、今はそんなことどうでも良い。
とにかく、この状況をどうにかしやな・・・。
そう考えている間も、財前の頭から、ポタッ、ポタッと赤い血が床に垂れている。
「ゴメン・・・財前、ゴメン・・・!アタシが、前見てなかったから・・・!」
アタシがパニクッてたら、一瞬フワッと財前の匂いがして、唇に柔らかい感触。アタシみたいなバカでもわかる。キスされた。
パニクッてたアタシの頭は一気に落ち着きを取り戻した。その代わり、アタシの心臓がフル活動しだした。まだ、鼻に財前の匂いが残っとる・・・。落ち着け!アタシの心臓!
「あんなあ、今そんなに大声出されたら頭に響くやろ。」
「ごめ、ん・・・なさい。」
「キス初めてとか?」
「図星やわ、どアホ。」
「ふーん。ま、俺も初めてやから、それでチャラにしといて。」
「嘘やー・・・絶っっっ対初めてやないやろ。」
「嘘ちゃうわ。」
あ・・・。顔、真っ赤や。嘘やないの・・・?ホンマに初めてなん・・・?あんなモテてんのに?
でも、言われてみれば、財前が告られとるとこは見たことあるけど、女の子と一緒におるところは見たことがない。
「あー・・・えっと、財前携帯持ってない?」
「あ、持っとる。でも、今授業中やろ?」
「あの、テニス部の背たっかい・・・誰やっけ、サボリ魔の先輩!」
「ナイス。千歳さんやったら来てくれるわ。携帯、胸ポケットに入っとんで取り出して、千歳さんに掛けて。」
「わかった。」
って言っても・・・胸ポケットに入っとる携帯を出すのって・・・だいぶ恥ずかしい・・・。でも、事態が事態やから勇気を振り絞って携帯を取り出した。そして、千歳先輩に電話を掛けて、携帯を財前の耳元へと差し出す。
「あ、良かった。繋がった。千歳さん?俺っすわ。財前です。実はちょっと・・・」
そして、少し喋ったあと、電話は切れて財前が千歳さん来てくれるって。と言った。良かった・・・。やっと出れるんや。
財前の顔色が、だいぶ悪くなっとる・・・。横を見ると、血が水溜りみたいになっとった。出れたら、まずは財前を保健室に連れていって、そのあと、白石先輩のところにも行って、財前のことを説明しやな・・・。(因みにアタシと白石先輩は同じ委員会)
「よっ・・・と。財前、大丈夫か?って、あんま大丈夫やなさそうやね。」
「あー、千歳さん。ありがとうございます。」
「あの、千歳先輩、ホンマありがとうございます。」
「お前が?」
「え・・・?そう、ですけど。」
「財前からいっつも話聞いとるばい。財前、保健室まで連れてってやって。」
「あ、はい。」
話聞いてるって・・・?アタシ、普段財前に何かしてたっけ・・・!?アカン、思い当たる節がありすぎる・・・。だって、今日・・・というかさっきまで、避けまくってたし、心ん中で嫌味言いまくってたし・・・。財前も同じようなこと言ってたんかな・・・。
「と、とりあえず、保健室行こ・・・?」
「。」
「は・・・?」
いきなり、名前を呼ばれて思わず立ち止まってしまった。しかも、変な声やった・・・。さっきまで苗字で呼んどったくせに、何でいきなり名前で呼ぶん!?やっぱ財前はわからんわ・・・。
「俺、お前のこと好きなんやけど。」
「・・・え、と・・何、で・・・?」
「お前、俺のこと避けとったやろ?やから、気になっとって、そしたら・・・どんどんのめり込んでった。」
「ほ、保健室行こ!とりあえず!!!」
「ああ。」
保健室に行くと、保険の先生にめっちゃ吃驚された。(まあ、当たり前。)そして、見てもらったけど、どうやら本当に大したことはなかったらしい。頭やから、少し切っただけでもたくさん血が出てしまうらしい。
・・・良かった・・・本当に。
「じゃあ、私今から職員会議やから、さん財前くんのこと看ててくれる?」
「あ、はい。」
思わず返事してしまったけど、さっき・・・告られたばっかなんやんな・・・。思い出したらめっちゃ気まずくなってきた。何か当の本人はこっち見てニヤニヤしとるけど。(何かムカつく・・・)
そして、アタシの腕をひくとまたキスをしてきた。しかも、さっきのとは違って長い、長いキス。
「んっ・・・!ぷは・・・」
「かわい。」
また、アタシの心臓はフル活動し始めた・・・!!
ホンマムカつく!この男!
だけど、アタシの心境はどんどん変化してきとる。それが事実。
制御不可能。
(ムカツク、ムカツク・・・だけど、もう止まらない。)
(誰がなんと言おうとは俺のや。)